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3/17 ミステリ・ラビリンス

ソードアート・オンライン オルタナティブ ミステリ・ラビリンス 迷宮館の殺人」を読んだ。

 

これは「ソードアート・オンライン」の世界観を下敷きにしたスピンオフ作品で(GGO世界で銃をぶっ放しまくるお話が書きたかった時雨沢さんの「ガンゲイル・オンライン」など、この他にもいくつかある)、テーマはなんとミステリ。

わざわざフルダイブ型MMORPGのSAOの世界観でミステリ? とはなったものの、ミステリ書きとしてハヤカワ文庫からも作品を出すなどしている紺野天龍さんが執筆ということで、あんまり不安はなかった。

「迷宮館の殺人」というタイトルといい、遠田志帆さんのイラストといい、なかなかにミステリ好きの心をうまいことくすぐるあたり、生半可に手を出したミステリという感じでもない。

そもそもライトノベルにおいては「本格ミステリ」という言葉をあまり鵜呑みにはしづらく、例えば特殊能力を用いたぶっ飛び解法によって真相を解き明かしたりだとか、謎解きよりもむしろいかに探偵能力をおもしろおかしく描くかに主題を置いた作品が多い。

そのためライトノベルでは、多少なりともミステリを読んだことのある人間が満足できるようなミステリを探そうとすると、なかなか難しいところだったりもする。

(もちろん米澤さんの「氷菓」をはじめとして、西尾維新さんの「クビキリサイクル」だったり、「子ひつじは迷わない」だったり、「“菜々子さん”の戯曲」だったり、“本格”かどうかはひとまず置いておくとしても、めちゃくちゃ面白いミステリラノベも、もちろんある)

 

「ミステリ・ラビリンス」はその辺りかなり真っ当にミステリで、とてもおもしろかった。

まずSAOのアインクラッドという舞台があって(ソードアート・オンラインの1巻を読んでいれば、とりあえずはついていけると思う)、フルダイブ型のゲームの中が舞台という特殊な設定を考慮しつつ、理詰めで何が起こったのが綺麗に解き明かすタイプの、真正面から謎と向き合った綺麗なミステリだと思う。

個人的には、謎のうちのひとつが正味なところ熟考したとてなかなか解けそうにないような謎だったところはムムムと思いつつも、しかしながら大好きなSAOの世界観の中でここまでしっかりとミステリを描いてくれただけで嬉しいと思える作品だった。

ここで完結でも綺麗でいいけれど、もし続刊があるなら引き続き追いかけていきたいと思えるくらいの作品で、とてもおもしろかった。

SAOのアインクラッド編くらいは分かる人でミステリに興味があれば、ぜひ一度読んでもらいたいという作品。