「日和ちゃんのお願いは絶対」シリーズ全5巻を読み終わった。
この作品はセカイ系が好きな作者がセカイ系を描いてみたくて生み出した作品で、いわゆる令和のセカイ系作品ということになる。
セカイ系といえばゼロ年代を中心にして爆発的に流行った一大ジャンルではあるものの、俺は正直セカイ系ってなんなのさ? ってところがあんまりよく分かっていなかった。
イメージとしては「イリヤの空、UFOの夏」とか「最終兵器彼女」とか「新世紀エヴァンゲリヲン」とかがセカイ系って言われるのはよく聞く。
軽く調べてみたらハルヒがセカイ系だと言われることもあるみたいだけど、「サマーウォーズ」とか「魔法少女まどか☆マギカ」とか「Angel Beats!」とかがセカイ系に分類されることもあるっぽい。
えー、「君の名は。」もそうなの? あれはセカイ系っていうのは、地域が小さすぎない? でもセカイの解釈って、なんでもいいのか。「天気の子」は確かにセカイ系っぽいかも。
うーんよく分からん。結局セカイ系ってなんなのさ? ってところを、俺はいまだに理解できていないなと思う。
そんな明らかにセカイ系の素養のない人間をして、『日和ちゃんのお願いは絶対』を読んで「なるほどね。こういうのがセカイ系ってわけかい」と思わせるくらいには、セカイ系としてのイメージにふさわしい作品だったと思う。
この作品のヒロインである日和ちゃんには、それを聞いた人が絶対に従ってしまう”お願い”という能力があって、それを用いて世界を良くしようと裏で秘密結社じみた活動をしているという。
そんな日和ちゃんが通っている学校で、ごく普通の恋に落ちて恋人同士になった頃橋くんと、その能力や活動が原因で衝突したり悩んだりする……という感じの、青春小説である。
まあもう説明の段階から世界をたったひとりで動かそうとしている日和ちゃんの設定があることからも、完全にセカイ系のイメージのもっともわかりやすいところってそういうことだよな〜という感じで読むことができた。
その上で物語の最後には世界がどうとかなることよりも、日和ちゃんと頃橋くんの等身大の恋物語のほうにフォーカスが当たるあたりも、セカイ系っぽいよね、という感じだった。
これからセカイ系の話題が出た時に俺が真っ先に思い出す作品は、たぶんイリヤでもなくサイカノでもなくエヴァでもなく、日和ちゃんになるんだろうなあ、というくらいには、頭の中にある本棚で「セカイ系」の棚に丁寧に押し込まれた作品になったなと個人的に感じた。